猫のデンタルケア

こんにちは、獣医の菊池です。
猫のデンタルケアについてお話します。


(1)なぜ猫にデンタルケアが必要なのか?

猫は口内トラブルが多い動物です。
人間と違って虫歯にはなりにくいものの、
3歳以上の猫の約8割が歯肉炎だという報告もあるほどです。

もともと野生の猫は完全に肉食の動物です。
小動物など捕獲した獲物を、硬い骨なども含めて噛み砕いて食べており、
歯垢はたまりにくい生活環境でした。
しかし、人間に飼われるようになったことで、
柔らかいペットフードを常食するようになり、
その結果さまざまな歯のトラブルを抱えるようになっています。

また、室内飼いが普通になり、猫の寿命が延びたことで、
適切なデンタルケアがされないまま年齢を重ねてしまい、
加齢とともに口内の病気が増えているという面もあります。

歯磨きをしないとまず、歯の表面に歯垢がたまってきます。
この歯垢が唾液に含まれるミネラル分と合わさって石灰化し、歯石になります。
この歯石を放置しておくと、歯肉炎や歯周病へと進行し、
最終的には歯槽膿漏になって歯が抜けてしまうこともあります。

でも、歯周病が本当に怖いのは、歯や口の中だけの問題ではなくなるからです。
歯石の中にはたくさんの細菌がいます。その細菌が歯茎の中に侵入してきて、
さらには体中にその細菌がまわるという可能性があります。
また、口の中の細菌は血液を通して心臓や腎臓に炎症を引き起こす
危険性があると言われています。臓器の機能にまで影響を与えると、
そのまま猫の寿命を縮めてしまうことにつながるのです。

このように、歯周病をはじめとする猫の口内トラブルを未然に防ぐために、
日頃のデンタルケアは必須です。
けれど、猫は自分で歯磨きをすることができません。
飼い主さんは猫の健康を守る責任を負っていると考えましょう。


(2)歯磨き前の練習をしましょう!

狩猟する動物である猫にとって、歯はとても大切なものです。
だからこそ、猫は歯を触られることを嫌がります。ですから、
いきなり歯ブラシを使わせてくれる猫はほとんどいないといってよいでしょう。
まずは口に触らせてもらい、指を口につけることに慣れてもらいます。
体毛のブラッシングや頭を撫でるついでに、
口周りに触られることに慣れさせます。

次に厚手の手袋などを着用し、
ガーゼに猫の好む食べ物の匂いなどを染み込ませて口内を触り、
「ガーゼが口の中に入る=おいしいな」という意識付けを行います。
前歯(切歯)から始め、徐々に奥歯(臼歯)へと進みます。

歯に触られることに慣れてきたら、
今度はガーゼで歯の表面をそっと拭ってみます。
その際は、ガーゼに猫用の歯磨きペーストやキャットフードを
含ませてもいいでしょう。
こうしたステップを経て、いよいよ本格的な歯磨きを行います。

永久歯が生え揃う時期(生後6カ月前後)の頃までに、
歯磨きを習慣にするのが理想です。
大人になった猫は少々やっかいですが、
歯磨き前の基本的なトレーニングとして、
飼い主さんが猫の歯に触っても噛まない程度のコミュニケーションが
取れるようになることがまずは必要ですね。


(3)歯ブラシでの歯磨きにチャレンジ!

歯磨きペーストをつけた歯ブラシを使って、
まずは前歯(切歯)の表面を磨いてみます。
ここで嫌がられたら、また別の日にトライしましょう。
ブラシに慣れてきたら、少しずつ時間を増やし、
犬歯、奥歯(臼歯)の順にブラッシングしていきます。
ブラッシングされることに慣れてきたら、
飼い主さんも磨き方をより本格的にしていきます。
ブラシの角度を45度にして、
歯周ポケットにたまっている歯垢を
かき出すようにブラッシングします。
もっとも歯垢がたまりやすいのは、上顎の臼歯です。
ここを重点的に磨くよう心がけてください。

最初はずっと猫に嫌がられる日々が続くかもしれません。
まずは週1~2回から始めて、
徐々に回数を増やしていきましょう。
回数とともに磨き方も本格化させ、
最終的には毎日の歯磨きを習慣づけたいものです。

歯磨きの際に気をつけたいのは、
歯磨きペーストは必ず猫用のものを使い、
人間用のものは使用しないことです。
人間用のミント入り歯磨き剤は
マタタビと同様の効果をもたらし、
猫を興奮させてしまう危険があります。
キシリトール入りのものはインスリンの過剰分泌を引き起こし、
低血糖や肝障害の原因となります。

また、人間用の歯ブラシは硬すぎて歯茎を痛めますので、
必ず猫用の歯ブラシを使うようにしましょう。
歯の表面に付いた歯垢が歯石となっている場合には、
歯磨きでは取ることができませんので、
動物病院で超音波スケーラーという装置を使って
削ってもらう必要があります。
そうなる前に、ぜひともホームケアで予防したいですね。


最近では、歯石防止用のキャットフードや
スナックも売られていますし、
水に混ぜるだけでデンタルケアができる商品もあります。
猫の個性や相性に合わせた、
長く続けられるものを選んであげてください。